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A-QOAの西田征治、小川真寛、白井はる奈、内山由美子

クリエイツかもがわより出版!

​作業療法士がすすめる

認知症ケアガイド

行動心理症状の理解と対応&活動の用い方

ローラ・N・ギトリン、キャサリン・ヴェリエ・ピアソル/著
西田征治・小川真寛・白井はる奈・内山由美子/訳

B5判・136ページ 本体1800円+税

認知症のある人と介護者のベストサポートを見つけよう!

認知症のある人や直接介護する家族、介護士だけでなく、作業療法士、理学療法士、看護師など専門職に役立つ、幅広い内容の対応方法を集めたガイドブック。

認知症がどの進行程度であっても、よりよく生きることを促進するために、コミュニケーションをとる、アクティビティを使用する、日々の活動を簡略化する、環境を調整する……研究や実践からわかった知識や技能をふんだんに盛り込む。

Part1 行動症状への対応の基本的な考え方

  • 行動症状/行動症状を引き起こすよくあるきっかけ/どのように行動に対応したらよいのでしょうか?/ 専門家の援助を探すとき など

Part2 日常のケアでの活動の使用

  • なぜ活動が重要なのでしょうか?/活動の利点は何でしょうか?/どのように活動を日々のケアに活用したらよいのでしょうか?/検討すべき手がかりや促しのタイプ/活動の紹介 など

Part3 効果的なコミュニケーション

  • コミュニケーションがカギとなる/言葉を用いないコミュニケーション/どんな活動を行うときも次の手がかりを用いてみましょう など

Part4 安全な住環境づくり

  • 安全な住環境/一般的な安全に関する考慮事項

Part5 認知症のある人の健康支援

  • 健康状態を管理すること/薬について/脱水について/便秘と排便の管理について/失禁の管理について など

Part6 介護者の健康管理

  • ストレスとは何でしょうか?

Part7 行動心理症状の理解と対応

  • 不穏/繰り返しの質問/不適切な金切り声、大声や不快な音/継続する訴えや不平/徘徊/落ち着きがなく動き続ける行動/探したり、ためこむ行動/ケアの拒否や抵抗/失禁/自身を傷つける行為/器物破損/性的不適切行為/睡眠障害 など

Part8 ワークシート

推 薦

京都橘大学 健康科学部作業療法学科 教授

作業療法士 小川敬之

世界の認知症人口は2030年までに7,470万人に増加し、2050年には1億3,150万人に増加すると予測されています。さらにOECD(経済協力開発機構)加盟国では日本が認知症有病率では一番高いとされており、認知症の課題は世界的にも、我が国にとっても大きな関心ごとです。

本書は、認知症の医療・福祉の大家であるDrexel UniversityのGitlin教授、Thomas Jefferson UniversityのPiersol教授が執筆した「A caregiver’s guide to dementia: Using activities and other strategies to prevent, reduce and manage behavioral symptoms」を邦訳したものです。特にGitlin教授は長年にわたって、認知症のある人にとって価値のある活動を生活に取り入れ、それを支援する技能を家族に教育するプログラムの開発に携わってこられた方です。米国作業療法学会にて翻訳者のひとり西田氏とGitlin教授との出会いから今回の出版が実現しました。その内容も副題にあるように,作業療法士の強みである活動をマネジメントしてより良い生活を送るための具体的な援助方法がふんだんに記載されており、特に認知症の人ご本人の混乱についての理解の大切さと同時に、介護家族中心のケアの視点に立った理解を強調している点は突出している部分でしょう。

対象の人がOccupy(占有する)される生活様式や活動を提供することは作業療法士にとって一番大切な介入です。また方法論だけでなく具体的な介入方法もセットでなければ、臨床場面では役に立ちません。この本のパート2「日常のケアでの活動の使用」では、活動がなぜ大切なのかから始まり、個人にとって意味のある活動を提供していくための具体的な方法をステップごとに提示し、家族や介護者が理解しやすいように丁寧に解説しています。認知症の人に対するケアガイドブックはたくさん出ていますが、この部分は他の本にないオリジナリティを感じる部分です。


パート1とパート7で述べられている行動心理症状の理解と対応では、単なるhow to本ではなく、行動心理症状がなぜ起こるのか、そのきっかけにはどのようなものがあるのか、そしてそれらを理解したうえで対応することが重要であるとする、対応の基本的な考え方と具体策が、ふんだんに記載されているのも特徴の一つです。


近年、認知症当事者と家族へ(介護方法の教育や認知症理解など)の同時介入の効果に関する報告もされています。パート6「介護者の健康管理」では、介護者が心身ともに健康であることの重要性と、簡単なストレス軽減方法について書かれており、まさに認知症のある人と介護者の両者にとっての幸せを考えた本だといえます。

「冷暖自知(れいだんじち)」という禅語があります。冷たいか暖かいかは自分で触ってみないとわからない。人が体験したことを聞いただけ、本に書いていることを読んだだけでは本当のところはわかりません。冷たさも暖かさも人によって感じ方はさまざまで、自分で体験することが一番だという意味だそうです。この本にはこれまで先人たちが培ってきた知恵と技法が多く述べられています。また作業療法士の強みを活かした支援方法と介護者の視点に立った、今まであまり類を見ない支援方法がふんだんに盛り込まれています。しかし、それも本に書かれた文字です。まずは、作業療法士をはじめとする専門職の方々が家族をサポートする際、この本に書かれている内容を実践してみることをお勧めします。必ずそこから多くの発見や確かな手応えを感じることができると思いますよ。是非、一度手に取ってみてください。

〈「OTジャーナル」 VOL.55  NO.5  2021年5月号より転載〉